「不治の病×恋愛」って、普段なら絶対に手を伸ばさないジャンルなのですが、これは何人かの方のレビューを見てピキーンとアンテナがはったので借りてきてみました。
勘、外れませんでしたよ。
主演二人の透明感が素晴らしく良かったです。

満足度:
★★★★★
2011年:アメリカ
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮
公式HP:
永遠の僕たち
あらすじ
交通事故によって両親を失い、臨死体験をした少年イーノック(ヘンリー・ホッパー)。高校に行かなくなったイーノックが親しく話す友だちは特攻隊の幽霊・ヒロシ(加瀬亮)のみ。
事故後、他人の葬儀に参列するのが日常の一部となったイーノックは、ある葬儀で、病によって余命いくばくもない少女アナベル(ミア・ワシコウスカ)と出会い・・・。
感想
特攻隊の幽霊・ヒロシ!?何じゃそりゃ?と思われるかもしれませんが、「死」のにおいに溢れたこの映画にはとてもしっくりくる存在でした。
特攻隊の軍服に身を包んだ加瀬亮さんの淡々とした演技も「この世のものではない」感じをほどよく醸し出していましたし。英語の発音もきれいなので、映画全体の雰囲気をぶち壊すことなく良かったです。
そして、主人公の高校生男子を演じたヘンリー・ホッパー(お父さんがデニス・ホッパーですって!)。自嘲的で繊細な主人公を透明感たっぷりに演じていて、素晴らしかったです。
先に言っておくと、この映画、ラブストーリーでもありますが、この少年の成長物語という部分も大きいです。
イーノックは両親とともに交通事故に遭い、3か月間昏睡状態に陥り臨死体験をします。さよならも言えないまま会えなくなってしまった両親。そして自分の面倒を見てくれることになった叔母。その叔母は事故の一因でもあり・・・。
複雑な心境を抱えたイーノックはけれど、その心の内を誰にも見せられず、話し相手はもっぱら幽霊のヒロシ。2人ですることといったら、戦闘機(?)のボードゲームや汽車に向かっての石投げで、まるで小学生男子のようなのですが、それは傷だらけの心がこれ以上壊されないようにするためだったんじゃないかと思います。
そしてそれは特攻隊員として命を失ったヒロシにとっても実は同様で、だからこそ、イーノックの前に現れたんじゃないか。そんな風にも思いました。
イーノックが他人の葬儀に参列するようになったことも何とか自分心を保って、死の側へ行かないようにするための無意識の行動で、それを思うととても痛々しいのだけれど・・・知らない側から見たらただの悪趣味ですよね。
でもそのおかげで彼は運命の女の子アナベルと出会うのです。
アナベルを演じたミア・ワシコウスカ。ベリーショートがとても似合っていて、そして彼女もまた透明感たっぷりで最高の演技でした。
アナベルはダーウィンの著書や鳥の図鑑を愛するちょっと変わった女の子。それはきっと彼女が長い間がんとたたかってきたからだと思うのですが・・・
イーノックとアナベルは二人だけのユーモアを共有し、とても深いところで結ばれていきます。
でもがんが再発したアナベルの余命は3か月。
出会ったばかりの頃、自分はそういうことに詳しいから死への準備を手伝うよと言っていたイーノックですが、やはり彼女を失う辛さに自分の気持ちを抑えきれなくなっていって、アナベルにきつく当たってしまったりします。
でも、それだからこそ、イーノックは自分の両親の死に対するわだかまりについても叔母にぶちまけられることができて。今までずっと一人で抱えてきたものを爆発させられたから、彼は一歩前へ進み出すことができたのです。
前向きな死、というとなんだか変に聞こえるかもしれないけれど。
ずっとがんと闘ってきた彼女は「死」に対して、それを受け入れる覚悟が出来ていたんだと思います。だから、最後に自分にぴったりのイーノックに出会えて、それは彼女にとって神様からのプレゼントに思えたんじゃないかな。
イーノックにしてもアナベルに会わなかったら、いつまでもヒロシと二人きりの世界から抜け出せなかったかもしれないのだし・・・。
実はヒロシも二人に会えたから、この世の未練にさよならできたのかも・・・なんて。映画の中では直接的には何も語らず 、観る者の想像力をかきたてるようなつくりが巧いなぁと思いました。
二人の出会いは二人にとって本当にかけがえのないもの。悲しい結末だけれど、なんだか幸せな気持ちになれる素敵な映画でした。
観る人によって色々な解釈ができる作品だと思うので、あなたなりの余韻をお楽しみください。
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予告編
http://youtu.be/RcLPPfUzU1w
↓寒い季節にぴったり♪
コメント
IHURUさんの感想を、
うんうんとうなずきながら読みました。
イーノックが他人の葬式に出るのは、
自分なりに死というものを理解したい、
とか、両親の葬式ってどんなだったかとか、
知りたかったからのようにも
思えましたが、
自分を保ちたかったから、
というのも、あったように思えました。
ともあれ、三人の役者さんたちの透明感が、
素晴らしく、見事なキャスティングでした。
それじゃ、また。
ヤン
2014/12/18 14:16 URL 編集返信イーノックが他人の葬儀に出ていた理由、そうか、両親のものがどうだったのか知りたい等もあるのか。そこは考えもしませんでしたが、きっと本人にも分からないくらい色々あったんでしょうね。
こんな風に人によって様々な解釈ができるつくりが素晴らしいなと思います♪
ihuru
2014/12/19 03:07 URL 編集返信